20年分の熱量で殴られてオタクが死んだ『映画プリキュアオールスターズF』感想
昨日、『映画 プリキュアオールスターズF』を観に行ってきました。
2023allstars-f.precure-movie.com
水曜のサービスデーを待つというケチくさい事をしていたらクリアカードがなくなっていて涙しました。似たようなことをしていた仮面ライダーギーツの入場特典は、一週間経ってもまだあったので余裕こいてたのですが、それがいけなかったですね…。
映画についてですが、メッッッッッチャクチャに面白かったです。観ている間「殺される……映画に殺される……」と思っていました。
自分のプリキュア履修歴は初代・5・ハートキャッチが途中まで、フレッシュ・スイート・ドキドキが一部のみ、スマイルおよびハピネスチャージ〜ひろがるスカイが全話、とかなり中途半端なので1回死んだだけで済みましたが、初代からすべて履修してる人だったら3回くらい死んでたんじゃないかと思いました。
下記から詳細な感想を述べていきます。ネタバレ注意です。
・雑感
自分はプリキュアオールスターズシリーズはほとんど観たことがなく、唯一観たことがあると言えるのは毎年のオールスターズが終わってから久しい『オールスターズメモリーズ』(以下オルメモ)だけだったのですが、これが圧倒的傑作でした。
で、今年もまたオールスターズをやるという発表を受けて以降、あれを越えるものなんか作れるんだろうか?と心配していたのですが、結果的には杞憂でした。
『オルメモ』とはベクトルの違う作品だと感じたのでどっちが上だとかを言うつもりはないですが、少なくとも「オールスターズ集合もの」としては今回のほうが完成度が高かったかも。
『オルメモ』は初代オマージュやHUGっと!の単独映画的な側面も強い一方で、『F』はレジェンドプリキュアの交流に全振り、といった印象です。どちらのほうがより好みなのかももちろん人によって分かれるとは思います。
一応個人的な所感で言えば、プリキュアシリーズをほぼ知らない・あるいはHUGっと!しか見たことがない人でも楽しめるのが『オルメモ』、シリーズを昔ちょっとだけ見たことがある・反対にシリーズを多く履修したことがある人に向いてるのが『F』、って感じでしょうか。
ライダーオタク的に言うなら『オルメモ』は冬映画っぽくて『F』は春映画っぽい
・ストーリー
まず最初にストーリーについて触れたいんですが、冒頭の時点でプリキュアは全滅しており、彼女らの強さに興味をもったラスボスが街ごとプリキュアを再生した、という筋書きは結構攻めてるなと思いました。
プリキュアシリーズは敵の規模がインフレすることも多いですが、破壊も再生も自由自在ということで、歴代の中でも相当上に来る規模の相手だったんじゃないでしょうか。全プリキュアが立ち向かうのに相応しいスケールで、格は十分にあったと思います。
途中で出てくるヒーリングっどの足湯が、単なるファンサービスに見せかけて伏線になっているのも上手く、真相が明かされたときは唸らされました。この何気ない描写が伏線になっていて途中で明かされるとバチッとハマる感覚は『キュアモフルン』を彷彿とさせますね。
ただ、いちご山に関してはセリフで説明されるまで存在自体に気付かなかったので、「あったっけ?」としか思えず首を傾げてしまいました。自分の注意が不足していただけかもしれませんが、もうちょっと印象的な場面が欲しかった気もします。
プーカの能力で世界がバラバラになってからの展開は涙腺が終わりかけました。ギリギリ終わらずに済みましたが、それでもやばかったです。
やはり視聴者的にも印象に残るシーンから「思い出」を引っ張ってきているのが素晴らしく、「初代はやっぱり8話からだよな」とか、「ゴープリやひろプリはやっぱそこだよね」なんて思いながら追体験して鳥肌が立ちまくっていました。
特に5は数ヶ月前に全話Youtube配信していたこともあり、気球の回や絶望の仮面の例の回など、見たことのある神回の映像が流れてきて泣きそうでした。まあ途中から更新についていけなくなってしまい履修が止まってるんですが……。オトナプリキュア放送開始までにせめて無印5くらいは見届けておきたいと切に思いました。
プリム、もといシュプリームとは和解して終わりました。あれだけの規模の破壊者とさえ和解できるプリキュアはすごいなと思う反面、マンネリ気味だしたまにはスカッと敵を倒してもいいんじゃないかと思う自分もいたりします。少なくとも今回のテーマには似つかわしくないのでそれは言うだけ野暮なんですが。
・テーマ
「プリキュアって何?」というプリムの問いがそのままテーマになってくるかなと思うのですが、まあシリーズも20年やってるので、自分が見てきた範囲だけでもいろんな解釈の余地があるはずなんですよ。
「夢」「希望」「未来」「笑顔」etc……。ぶっちゃけどれにフォーカスを当てたとしてもシリーズの理念から大きく乖離はしないと感じつつも、最終的にどんなテーマを打ち出してくるのか気にかかっていたのですが、この映画の結論は「仲間」でした(と解釈しています)。共演映画であること、ソラましの関係性が重要なファクターであること、初代からして「ふたり」であることを踏まえると、普遍的ながらもこの上なくしっくり来るいい結論だったと思います。それに対してシュプリームがややズレた解釈をするところも悪役らしさがあってよかったですね。一瞬無惨様を彷彿としましたが、あそこまで独善的じゃなかったのでシュプリームは改心できました。
一応自分としてはもし「プリキュアって何?」と聞かれたら「日常を守る戦士」って答えると思うんですけど、別に日常を特に守ってない(というかそれが主目的でない)プリキュアもいっぱいいるんですよね。ヒープリとかゴープリとか。なのでなおのこと、ドンピシャないい回答だったと言えるかなと。素晴らしかったです。
・キャラ
・ひろがるスカイ組
この5人は現番組の主役たちなので当然メイン級なんですが、前述した通りオールスターものの側面が強いので、『オルメモ』みたいにワンオペ育児の闇を描き出したりすることもなく、ある意味平和的に他と絡んでました。
ただ、(現番組の主役にしては)短めの出番の中でも光る活躍はあったように思います。
ソラはまなつ・ゆいとの交流を通して自身のヒーロー観を更新していたり、ましろは誰よりも真っ先にプーカを心配して声をかけたり。シュプリームの裏切りで微妙にヘラってたところはやや情けないかなとも思いましたが、本編でヘラってたときはもっと情けない感じだったのでセーフです。
ツバサ、あげはは大ピンチの場面で自らが犠牲になってソラましに希望をつなぐことを即決していました。はっきり言ってヒーロー志望のソラより彼らのほうがヒロイックだった気がします。素直にカッコよかったです。
エルちゃんだけは割を食っていた感じがします。マジェスティとしての活躍もほぼないし、それ以外のシーンでもほとんどマスコットみたいな扱いでした。とはいえ彼女に関してはテレビ本編が絶賛販促期間中なので、ある意味バランスは取れていると思います。
・まなつ
これはどのキャラにも総じて言えることなんですが、ちゃんと原作通りのキャラ解釈で動いているのがすごく丁寧で感動的でした。まなつは変わらない明るさと前向きさでソラを引っ張っていく姿に先輩らしさを感じたし、不安がるソラに「私だってトロピカる部のみんなは心配だけど」と意外に思慮深い発言があったのもとてもよかったと思いました。あとは何気ない部分なんですが、プリムとの初対面時にちゃんと「私は夏海まなつ!あなたは?」って言ってくれたのが嬉しかったです。原作理解度がとても高い。
・ゆい
デパプリのシリーズ構成って田中仁さんでしたっけ?と思うくらいの鮮やかな動かし方で、正直思い出再生およびラストのアクションシーンに次いで感動したのがゆいの扱いでした。
本編ではいまひとつ有効活用されなかった「おばあちゃん言ってた!」がちゃんと意味のある名言として、ソラの心に響くのも納得な形で使用されて、それだけでもぐっと来るものがありました。ラストシーンの「同じ釜のご飯を食べた仲」も、ちゃんとプリムとの食事シーンを経た上での引用なので非常に効果的で、細かいところで輝いていたと思います。サバイバル生活中心だったので単純に料理担当として役立ってたのもいいですね。本編じゃ食ってばっかだったのに……。
・のどか、ラビリン、ローラ、あまね
何基準で集められた組分けなのかよくわかりませんが、プーカと一緒に行動していた面々。
ローラはすごく動かしやすいキャラなんだろうな、と改めて感じました。この手の集合映画だと、彼女のキャラ付けがいかに歴代でも特異なのかよくわかります。中盤で必殺技を撃ったあとひとりくるくる回っていたところが最高にトロピカってて(?)好きでした。
のどかは体力のなさと持ち前の優しさが強調されていましたが、前者に関してはアスミと知り合った頃にはジョギングとかしてもうちょっとマシな感じじゃなかったっけ?と微妙な引っかかりを覚えたりもしました。他の面々も特別フィジカルが強めなイメージなのはせいぜいあまねくらいで、彼女だけ劣るほどかな…とは思ったり。まあちょっと本編うろ覚えなので間違っているかもしれないです。
のどかがましろと絡んだところと、のちにラビリンと再会したところは思わず吹き出しそうでした。まあ実際は中の人ネタなんてマニアックなところには突っ込まなかったので勝手に可笑しくなってただけでしたが。実際に聞いてみるとラビリンとましろで演技がちゃんと切り替わってて、声優さんってすごいなぁと驚かされました。
あまねは……特に何もしていなかった気がします。彼女も尺の都合で割を食ったイメージですが、キャラが多いので致し方なしですかね。
・はるか、ことは、さあや
劇中での会話からするに、ツバサも含めて「夢」つながりで集められたチームかな、と思ったんですが、ことはは「夢はよくわかんないけど」なんてセリフがあるし、さあやも夢絡みで悩んでたのはハグプリメンバー全員で彼女だけでもないので、こっちも基準がよくわかんないチームに感じました。
はるはるはプリンセスと間違われて照れるというかわいらしい場面があったり、自己紹介時に例の回るフリルの演出があったり、戦闘においてもトルビヨン2種披露に1話オマージュの演出があったりと、結構優遇されていたような気がしました。監督と脚本がゴープリのスタッフだからでしょうか? ゴープリ信者なので嬉しかったですけど。
ことはも原作からまんま飛び出してきたみたいな天真爛漫さがあってよかったです。魔法で空飛んだり、風船出してみんなで移動したりと魔法つかい要素もちゃんと押し出されていて満足感がありました。そして相変わらず酷使されるピンクトルマリンさんにも笑いました。
さあやはしれっと初登場時からエルちゃんを抱っこしていて、様になりすぎてるのがちょっと面白かったです。先程は選出基準が謎と言いましたが、最終的に産婦人科医になることから選ばれたんでしょうか。だとすると納得です。
・ゆかり、ララ、アスミ、ラテ
ここは大人(っぽい)チームかなと考えれば一応選出基準はわかります。
ゆかりさんはめんどくさい猫キャラを発揮していてよかったです。しかもあきゆかの供給までありました。個人的にはいちゆかが好きなのでそこまで刺さりませんでしたが、あきゆかのオタクはここで死屍累々になってそうだなと思いました。
ララは見た目の割に(?)常識人なところがあるので、そのあたりが描かれていました。あげはさんからは子供扱いを受けていましたが、ぶっちゃけこの面々で言ったら精神年齢的に一番成熟してるのはララなんじゃないかなと冗談抜きに思います。もしくはラテ。
アスミは本編では中身赤ちゃんなところも結構描かれてたんですが、今回はわりと冷静で大人っぽい振る舞いをしていた印象です。ラテが走り出したときは彼女も猛ダッシュで追いかけて事態をかき回しそうな予感がしたんですが、そこまで暴走しなかったですね。
・プーカ
見た目かわいいんですが、正直あの物を破壊する力はかなり怖いと思います。
列車を粉々にしたとき、ましろチームの面々は「びっくりしたけど平気だよ」と普通に受け入れていましたが、正直なところあればっかりは脚本の都合を感じちゃったのが本音です。運良く対象が物だけで留まったからあれで済んだものの、一歩間違えたらあれで全員死んでたかもしれないので、もうちょっとビビるほうがリアクションとしては普通な気がします。
もちろんそれをやるとプーカはもっと心を閉ざしてしまうのでそういうわけにもいかないんですが、ぶっちゃけあれを普通に受け入れられるプリキュアたちのほうがある意味怖いなと思ってしまいました。尺の都合と終盤でのギミックを考えるとああするしかないのもわかるので、この辺は深く考えないほうがいいかもしれません。
キュアプーカになったところは結構驚きました。唐突といえば唐突でしたが、有無を言わさぬ勢いで全部丸め込まれて素直に燃えたのでオールオッケーです。
・シュプリーム
ストーリーの項目にも書きましたが、かなり規模の大きいやつだし、何よりプリキュアの強さに興味を持って姿を模したというのが面白いです。
劇場版限定のゲストプリキュアと見せかけてゴリゴリの悪役だったのも意外性があります。一応最後は改心しましたが、キュアシュプリームって歴代プリキュアにカウントされるんでしょうか? 性質を考えるとダークプリキュアとかアンラブリーとかに近いのでやっぱりノーカンなんでしょうか。
さっきプーカを受け入れるプリキュアは逆に怖いと書きましたが、彼(彼女?)を受け入れられるプーカもなかなかのものだなと思いました。とはいってもこれは捻くれオタクの戯言であり、シュプリームがプリキュアに憧れたと語られていたことから、あそこからのやり直しは十分に利くと思いますし、素直に感動しました。それを差し引いてもプーカの器広すぎるな…と思っただけなので……。
・戦闘
シュプリームの圧倒的な力による絶望的展開、そこからしっとりとした感動の演出にプリキュアたちの復活、そして一気呵成の反撃。
それまでの鬱憤を晴らすかのようなハイスピードバトルが展開されて、熱くなりながらも涙腺を刺激されていました。
これに関しても『オルメモ』と明確に差別化されていて、あちらは各チームによるバトルをOPアレンジの劇伴に乗せて順番に見せていく格好だったんですが、今回は挿入歌とともに各プリキュアの特性や共通点を踏まえた共闘を行う形になっていて新鮮でした。あと手書きとCGの差もあるか。
ただ、あまりに早すぎるし画面の情報量が多い!(褒めてます)
劇場版で大迫力で見るのももちろんいいですが、個人的にはタブレットなりテレビなりで一時停止できる環境で見返したいと思いました。未発見の小ネタがまだいくつも隠れているんだろうな……。
観た範囲で気づいて印象に残っている組み合わせは、蝶つながりでドリームとバタフライ、電撃つながりでミルキーとピース、人魚つながりでラメールとマーメイドあたりでしょうか。特にラメールは当時「マーメイドが使われてなかったらローラがキュアマーメイドだったんだろうな」とか言われてた気がするので、夢の組み合わせという趣があって面白かったです。
他にも星つながりやほかほかハート×キラキラル、場面は前後しますがハッピーとラブリーで幸せつながりなど、若干マニアック気味な視点で組み合わせが作られていて見ごたえは抜群でした。はやくBDもしくはレンタルを解禁してほしいです。何度観ても飽きなさそうですね。
一方で、『オルメモ』と違って今回は全員に台詞があるわけでもCVのクレジットがあるわけでもなくやや残念な気持ちになったりもしましたが、あれから5年経ってるし、何より当の『オルメモ』でもほぼ「GO!」って言うためだけに呼ばれたであろう沢城みゆきさんみたいな例もあったりするので、無理に全員呼ぶよりこのくらい割り切ったほうがいいという判断なんでしょうね。というかむしろ前回が特別だっただけか。
・あとがたり
レジェンドプリキュアを見せるための作品でありながらも前衛的な設定やキャラを導入していて、シリーズ20周年記念に相応しい大作だったのではないかと思います。70分しか上映時間がないとは思えないほどに展開の起伏や見せ場が多く、大満足でした。多少ひっかかったところもなくはないですが、ほとんど気になりませんでした。
正直なところ『ひろがるスカイ』テレビ本編が自分には全然刺さっていなくて、去年のデパプリよろしく劇場版でキャラやテーマのフォローを…みたいな期待が少しあったんですが、その辺の要素は薄めでした。もちろん実際の映画を見るとあれ以上詰め込んだら破綻するのは想像に難くないので、これでよかったと思っています。
『F』=FINAL…?ということで、今後オールスターズが作られるかはわかりませんが、これがもし締めの作品になったとしても、誰に文句をつけられることもない傑作として有終の美を飾れたのではないかと思っています。もちろん、今後も作られるならそれはそれで嬉しいんですけどね。とはいえ、『オルメモ』と合わせて高い双璧になったと思うので、作るとしてどう差別化していくのかは課題になりそうです。
タイトルロゴの後ろのリボンと組み合わせて『Not FINAL』になるらしいですね。
そもそもリボンの存在自体に気がついてなかったのでそれ込みで驚いたんですが()、とりあえずオールスターズはまだ続きそうでよかった……のかな?
前述した通り差別化が課題になりそうなので、(おそらく)5年後のオールスターズは極めて大変そうだなと思います。