脱輪機関車

サブカル全般、思ったことを書き留めたいブログ

荒唐無稽で繊細なロマンシス&ギャグラブコメ、『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』を見てください

2023年秋アニメ、期待の注目作が大量で、どれから見たらいいか迷っている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

ウマ娘SPY×FAMILY』『葬送のフリーレン』『オトナプリキュアetc……。

 

もちろんそれらも目が離せないのですが、個人的に今期絶対に押さえておくべきだと思うアニメは、『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』、通称『100カノ』です。

 

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下記から、その魅力を語っていきます。布教記事です。

興味のある方はぜひ続きを読んでいってください。

 

 

 

ギャグベースのラブコメ…で終わらない幅広い作風

 

PVを見ていただければわかる通り、原作は基本的にはポップで明るいノリの、ギャグベースのラブコメ、もといラブコメ要素を孕んだギャグ漫画です。

「100人の彼女」というワードから、『Sch○ol days』的なドロドロと破滅を予想される方もいるかもしれませんが、そういう感じにはならないので安心してください。

 

基本的にはギャグ漫画なので、いわゆるリアリティラインは低めです。恋太郎がヒロインの照れ隠しでボコボコにされても次のコマでは割と平然としていたり(してないこともあるけど……)ヒロインの薬で妙なことになっても次のコマや次の週にはなかったことになっていたり(ならないこともあるけど……)します。独特のワードセンスと圧倒的勢いによるボケとツッコミの応酬も面白く、多少ノリを選ぶきらいもなくはないですが、決して退屈はしません。

一方でブコメ要素、そしてキャラクターの感情の機微については非常に繊細かつ丁寧で、極めて自然です。彼女たちは「運命の人と付き合わなければ死ぬ」業を抱えていますが、恋太郎がヒロインたちと付き合う動機はそこにはありません。あくまでも「恋太郎自身が好きになったから/幸せにしたいから」彼女たちと付き合う、と明言されており、単なる義務や使命、同情といった感覚は皆無で、だからこそこちらも純粋に、好き合う恋太郎と彼女たちを見守ることができる、といった構図になっています。

 

彼女たちにとっても、相手が運命の人であるという前提から、基本的には「恋太郎と付き合えない不幸>二股される嫌悪」という感覚がベースです。これだけだと一般的な感性をもつ読者、特に女性読者からの支持は得づらいかなと思うのですが、この彼女側の心理に説得力を持たせるのが主人公・愛城恋太郎の魅力です。

恋太郎というキャラは、「百股をかけることになる」のに「誠実」と、一見相反する要素の塊に見えますが、この設定は決して肩書だけのものではありません

ハーレムを築くにあたって大事なのは彼女たちの気持ちであると考え、もし幸せにできていないと感じさせた場合は容赦なく腹を切る覚悟を決めています。好きになった娘のために徹夜で努力したり命を懸けたりするのは当たり前。一方で他人の悩みに寄り添うことが逆効果と感じたらあえて軽く突き放す柔軟さも持ち合わせており、すべての行動が他人を想ってのことだときちんと伝わってきます。劇中では他の彼女への愛を「新しい油田を発掘したようなもので、気持ちが移ったわけではない」と例える場面もありますが、それが口だけではないというのも、読んでいくうちに実感できてきます。

また、基本的に恋に盲目で彼女第一主義な男ですが、第一話では彼女以外のためにも平然と自分の時間を他人のために使う様子が描かれており、とにかく底抜けの善人であるといった描写に抜かりがありません。

某スナックの漫画に「ラブコメを楽しむには主人公も好きになれなければ楽しめない」という言葉が出てきますが、この点において恋太郎は及第点以上と言っていいと思います。

 

理屈面でのフォロー(運命の人がいること自体が幸運、なので付き合えないと反動で死ぬ)感情面でのフォロー(単純に好きだから幸せにしたい)による両輪のカバーでまず「百股するのも仕方ないか……」と状況を飲み込ませ、その後キャラ自身の魅力・誠実さによって「応援したい」と思わせてくる

それが100カノのアプローチであり、同時に作品の土台でもあります。

荒唐無稽な設定に見えて、意外に地固めの部分は論理に基づいている、この絶妙なバランス感覚こそ100カノの強みのひとつです。

 

そしてこの絶妙なバランス感覚は折に触れて登場し、普段は濃いキャラ群による「令和のボーボボと称されるほどのぶっ飛んだギャグが展開される一方、新しい彼女と出会う回においては恋太郎が彼女の本質を見抜き、ロジカルな対処を行うことで対象の恋心を射止める、といった語り口が頻発します。

原作で数ヶ月前に公開されたとあるエピソードにおいては、リアルな親子のすれ違いの物語を、一切笑いなしで真正面から描いていたりして、作風が極めて幅広いこともまた大きな魅力です。

 

 

NLなのにロマンシス、百合好きにもおすすめ

 

いやいや、そうは言っても百股かけていく漫画なんだから、女子同士のドロドロもあるんじゃない?なんて意見も聞こえてくるやもしれませんが、全然そんなことはありません

前提として彼女たちはみな善性の強い良い子ばかりであり、「恋太郎が彼女同士仲良くしてほしいと考えている」(→愛する恋太郎の気持ちに準じたいから仲良くする)「同じ恋太郎を好きな者同士通じ合うものがある」「大好きな恋太郎が選んだ彼女だから信じられる」といった思考がベースなので、彼女同士の対立とか殺伐百合的なものは存在しません。それゆえに、こちらとしても余計な気を揉むことなくキャラのやり取りを楽しめるわけですね。

 

もっと言うと、この漫画は恋太郎⇔彼女たちの関係のみならず、彼女⇔彼女の関係も非常にオイシイものがあります

例えば、これは最序盤(おそらくアニメの1話か2話)で描かれるものですが、最初の彼女ふたりである羽香里唐音は普段しょっちゅう喧嘩している一方、喧嘩するほど仲がいいという解釈のもと定期的にイチャついていたりします。ある意味某世界一売れてる漫画の剣士とコックみたいなもんです。

また、3・4人目の彼女である凪乃は、普段クールな凪乃がその態度を崩すほどに静を可愛がっており、静自身も凪乃に懐いている様子で、見ていてとても愛くるしさがあります。さらに、その関係をもとに互いのパーソナルな部分に踏み込むこともあり、単なる表層的な絡みだけでなく、深い友情のつながりを感じさせてくれるのです(もちろんこれは、なのしず以外の組み合わせにおいても例外ではありません)。

他にも現状アニメ登場予定のないキャラで言えば、母性に溢れるとある彼女×甘えたがりのとある彼女といった凸凹がぴったりハマる要素の組み合わせもあったり、反対に一見共通点のない意外な組み合わせが思わぬ共通項で絡んだりと、まさしく十人十色。

時には恋太郎が一切登場することなく、彼女同士のやり取りだけで問題が解決されたり、そのふたりだけの独自の関係が構築されたりと、濃厚なロマンシス(恋愛関係でない百合)の要素を持ち合わせています。

実は23年9月末現在の原作では26人の彼女が登場済で、その全員がレギュラーであるという凄まじい状態なわけですが、その26人それぞれの掛け合いを眺めたり、あるいは妄想するだけでも楽しいものがあります。

彼女がひとり増えるだけで、既出すべての彼女との掛け合いの幅、カップリングの可能性が雪だるま式に増えていく。これもまた、100カノの大きな醍醐味のひとつです。

 

 

濃すぎる彼女たち、埋没しないキャラメイク

 

前段でさらりと触れましたが、現在の原作では26人のレギュラー彼女がいます。当然、恋太郎を入れればレギュラーの数は27人です。ここまでで、「そもそも百股なんて言ってるけどその前に作品終わるんじゃない?」と思った方もいるでしょう。特に連載初期なんかは「10人くらい行けたら十分だよね」なんて声もありましたが、繰り返します。いま26人です

これでもまだ全体の約1/4しかいないので、今後4倍に増えていくことになります。実際に100人に到達できそうかどうかは、この事実を踏まえて各自で判断すべきなのかなと思います。ちなみに自分は連載当初の段階から、不慮の事故か打ち切りか以外で断念することはないだろうと思っていました。そんなことをする原作者ならばそもそもこんな無茶な企画は立てないはずだからです。

そして、もうひとつ連載当初に多かった声としては「双子とか五つ子とかで水増しするんじゃない?」とか、「そのうち宇宙人とか人外とか出てくるんだろうな」というものがありました。これは原作未読の方にとってはある意味ネタバレかもしれませんが、現状その手の水増しは一切ないし、人外の彼女もいません人外みたいなスペックの彼女はいっぱいいるけど。

つまりは、ひとりひとりがしっかりとキャラを作り込まれた上で、約3年の連載期間の中、少しずつ彼女を増やし続けて今に至るわけです。

そうなると今度は「26人もいたらフェードアウトするキャラも出るんじゃない?」なんて思われる方もいるでしょう。心配いらないです、出ません。

……まあ厳密に言うと、「体感として最近この子影薄いな」と思うこと自体は、個人的には時々あります。「メインでスポットの当たる回」の有無についても、正直やや差を感じることもなくはないです。ただ、「全員に出番のある回」も結構な頻度で差し込まれるので、彼女の存在そのものがないがしろにされたり、特定の子だけ出番が削られて何話も出てこない、なんてことは一切ありません。その結果、26人も彼女がいても特別大きな格差を感じることはなく、先述した掛け合いの幅や、突飛なギャグも相まって存在感が消えるようなこともないです。

何よりも、26人いて「被ってるキャラ」が全然いないです

アニメに出てくるのが確定している5人のヒロインはもちろん、それ以外にも大食いギャル野球少女メイド委員長など、様々な属性のヒロインが原作には登場します。

ただし、単にその属性をつけただけの、記号的なキャラではもちろんありません属性をあえて誇張して強い個性にしたり一見関係のない属性が付け合わせみたいに乗っかって二面性を演出していたりして、皆それぞれにインパクトがあります。特に原作既読の方からしたら、前述した「野球少女」がいかにキャラの一面しか捉えていないかはよくわかるでしょう。

はっきり言って26人のうち誰であっても、ひとりかふたりをメインヒロインに据えるだけで、単行本5冊ぐらいの連載は行けると思います。そのぐらい強烈なキャラがたっくさんいます。そんな濃い彼女たち26人の掛け合いが無限大に楽しめる上に、今後も膨れ上がっていくわけです。なんと贅沢な企画でしょうか。

もちろんキャラデザもみんなかわいいです。かわいいだけでなく個性的で、シルエットの被りもありません。15人目の彼女である茂見紅葉ちゃん(原作未読の方用に伏せます)なんかは、それまでのどの彼女とも雰囲気の異なる子が出てきて、作画担当・野澤ゆき子先生の引き出しの多さに驚嘆してしまったのをよく覚えています。

 

とにかく、飽きません。残る彼女は74人いるわけですが、それでも誰一人被ることはないんだろうなと、今となっては完全に信頼を置いております。

さらに言えば、先述の「五つ子とかでそのうち水増し〜」という意見ももはや、原作・中村力斗先生にかかれば「ちゃんと五つ子である意義を掘り下げてくるんだろうな」「5人全員全然違う性格・属性になるんだろうな」としか思えないし、野澤ゆき子先生のキャラデザも「5人全員まったく違うシルエットの見た目になるんだろうな」としか思えず、要するに水増しが水増しにならないので何の意味もないだろうなと考えています。

逆に近頃は読者側から「ちょっとぐらい水増ししてもいいよ」という意見が出てくる始末。決してキャラメイクに手を抜かない制作側のスタンスと愛情もまた、100カノの美点です。

 

 

まとめ

 

というわけで、布教記事でした。

まとめると、勢いのあるギャグに繊細なラブコメ、論理的な土台固め、キャラの濃い彼女同士の百合(ロマンシス)や好感を持てる主人公など、多面的な魅力に溢れた作品である、ということです。

アニメ開始前であることを考慮していろいろと伏せて書いてしまったので、素晴らしさを十分に伝えきれたかは極めて不安なのですが、できるだけ多くの人の目に触れ、多くの人が100カノを見てくれたら嬉しいなと思います。

アプリ版ヤングジャンプのコメント欄などでは「タイトルで敬遠してた」という意見が多かったのですが、それは非常に勿体ない!散々書いてきたように、とっても面白い作品ですので、ぜひ今期アニメ何を見るか迷っている方も、そうでない方も視聴してみてください。もちろんアニメの出来は未知数なので原作と違った…となる可能性は捨てきれませんが、PVを見る限りかなり気合を入れて作られていそうです。最悪原作への導線になればそれでいいかなと思います(23-10-09追記)とか思ってたんですけど、アニメ第1話ものすごくよかったです。舐めてました。すみませんでした。最高でした。(追記ここまで)

アニメ100カノの放送・配信情報はぜひこちらからチェックしてください。

On Air | TVアニメ「君のことが大大大大大好きな100人の彼女」公式サイト

記事書いて上げた日がアニメ1話放送当日なので直近も直近すぎてアレなんですけども。

 

ひとまず原作の第1話を貼っておきますので、アニメまで情報を入れたくない!という方以外は試しにこちらで読んでみてください。

shonenjumpplus.com

 

もしこの記事や第1話を読んで原作に興味が湧いたという方がいれば、ヤングジャンプ(最速)、ジャンププラス(1週遅れ)、ニコニコ漫画(2週遅れ)、ゼブラック等で読めますので、ぜひ最寄りの漫画アプリでご一読を。